「企業組合」に靴を卸し、技術指導も破格の条件で用意してくれていた名古屋の「問屋」に「損害賠償」が提起されたのはしばらくたってからだ。二人目の現地指導者が急死し、最初の奴が復活したころだ。
 訴状の大半は、「破壊主義者」「陰謀の元凶」として、Wa氏への罵詈雑言に満ちていた。「問屋」の「違約」はほんの一部。党派の政治文書のような訴状に、問屋があわてふためき、「いったいあの人たちはどんな人なの?」と問い合わせてきた。苦虫をかみ締める以外になかった。

 「訴状からすれば、損害賠償の相手は、Wa氏だよね」「ほんと、私だと思うけど」。
 「ウィークポイントの狙い打ちかね」「これで裁判になるのかね」
 「損害賠償額が百○万、訴訟の手付金が30万。百%勝訴でも残るのは…。目的は?」
 「中核派はこんなことで民事訴訟などするの?権力との関係は?」「うーん。聞いたことがないけど」

 以降、Fu氏に会った時は口頭で、基本は、文書にまとめて、「党」に郵送を続けた。
 念のため、本社の最高指導者と、労働運動の最高指導者、そして何人かの関係者に直接送り続けた。
 
 訴訟は被告側の大量の資料で、勝利的に進んだ。
 しかし、どんでん返しが待っていた。被告の問屋が証言台に立った。訴訟も初めて、事務的実務も得意でない、そもそもこんな揉め事は初めてという被告は頭が真っ白になったという。原告側が巧妙にいびり続けたという。被告は、こまかい事実関係の証言を投げ出して、怒りだけをぶちまけてしまった。

 「大企業の零細いじめ」--人の良い、正義感に溢れる?裁判官が出した図式があてはめられた。
 判決は「5分5分の責任」に終わった。ふんだくられた。