週刊『前進』(2464号4面1)(2010/11/15 )

 沖縄県知事選と労働者階級の立場

 国鉄決戦-全国運動を発展させ基地撤去、安保粉砕・日帝打倒へ

 革共同沖縄県委員会 

大恐慌情勢が世界中を覆い尽くしている。帝国主義は自らの生き残りをかけて、一方では激しい帝国主義間の争闘戦を繰り広げ、他方では体制内指導部を変質させ、労働者階級の団結をたたきつぶす攻撃をかけてきている。しかし、労働者階級は社会の真の主人公として今こそ帝国主義を打倒するために「世界大恐慌をプロレタリア革命へ」敢然と立ち上がり始めている。こうした大情勢の中で帝国主義の最大の矛盾の集中点である沖縄で新たな闘いが激しく火を噴いている。その沖縄は今、県知事選挙の真っ最中である(11月11日告示、28日投開票)。選挙戦は事実上、現職の仲井真弘多知事と伊波洋一・前宜野湾市長の2人の争いとなっている。これに対して、労働者階級はどのような立場で闘わなくてはならないのか。

 日米合意を貫く菅民主党政権倒せ

まずはっきりさせるべきことは、今日の世界大恐慌のもとで帝国主義は体制的崩壊に向かって転落を開始していること、生き残りをかけて帝国主義間・大国間の争闘戦にのめり込んでいること、ブロック化と戦争が現実のものとなりつつあることの確認である。
米帝オバマは、大恐慌の深化・激化にのたうち回りながら、対中国スターリン主義の対峙・対決を決定的に強めている。それは同時に日帝に対する争闘戦の激化でもある。TPP(環太平洋パートナーシップ協定)、釣魚台(ちょうぎょだい、尖閣諸島)をめぐる日帝・菅民主党政権の凶悪な攻撃は、米帝のブロック化、争闘戦、帝国主義侵略戦争に向かっての攻撃に追いつめられてのあがきである。崩壊にあえぐ帝国主義の絶望的で凶暴な本質をむき出しにした攻撃である。
こうした中で、菅政権は、「辺野古移設」を明記した5・28日米共同声明を実現することを宣言し、沖縄労働者人民に真っ向から襲いかかっている。そのために釣魚台侵略と排外主義・愛国主義宣伝も位置づけている。
何よりも労働者階級と労働組合が、今こそ怒りを込めて「普天間基地撤去・辺野古新基地建設阻止」「米軍基地撤去=沖縄奪還、安保粉砕・日帝打倒」「戦争と大失業の菅民主党政権打倒」を掲げて闘わなくてはならない。

 知事選の中に基地問題の解決はない

今回の選挙の最大の争点は、普天間基地問題であると言われている。しかし問題は、今回の県知事選挙にあたって労働者階級はどういう立場をとるのかということだ。
結論的に言って、今回の県知事選で仲井真が勝つのか、伊波が勝つのか、というところに沖縄基地問題の解決はないし、選挙に何の幻想も持つことはできないということだ。
仲井真知事の「県外移設」がまったくのペテンであることは言うまでもない。これまでさんざん県内(辺野古のことだ!)移設を容認し、推進してきた人物が、沖縄の労働者階級人民の圧倒的な反対の声と闘いの前に自らが打倒されることを恐れて、急きょペテン的に「県外移設」を言っているにすぎない。
では伊波はどうなのか。今回の選挙戦で伊波は「県内移設反対」を掲げている。彼の持論である「グアム移転論」は、今回立候補にあたって3党(社民、社大、共産)での調整の結果、政策には明記されていないが「主張は続ける」として集会や街頭演説などではこれをメインにアピールしている。
伊波の主張は、普天間基地の「グアム移転論」に尽きる。「私が当選すれば、普天間基地問題は解決する」と自ら主張している。また「沖縄の海兵隊のグアム移転に行く流れはすでにできている」と言い、さらに「グアム移転を実行させることが重要であり、県外へ移すという流れを新たにつくる必要はない」とまで言っている。
では、このように主張する伊波の「グアム移転論」とはどういうものなのか。

 米帝の文書に依拠したグアム移転論

伊波の「グアム移転論」の中身は、米太平洋軍司令部作成の「グアム統合軍事開発計画」(06年7月)によっている。そこで「普天間飛行場の海兵隊ヘリ部隊はグアムに移転する」と記されていることに依拠しているのだ。それを一生懸命後押しすれば普天間基地はグアムに移転する、としているにすぎない。
しかしそこには、階級の力で、国際連帯の力で基地撤去を闘いとるという思想は皆無だ。元宜野湾市職労委員長だった伊波が、まさに労働者階級の力に依拠するのではなく、帝国主義の政策(=軍事戦略)をよりどころにし、それを後押ししてグアム移転を進めようしているのだ。その根底にあるのは労働者階級への絶望であり、帝国主義への屈服の思想だ。
伊波はこの選挙戦を前に、『普天間基地はあなたの隣にある。だから一緒になくしたい。』と題する著書を出版した。ここに伊波の主張のほとんどが書かれている。その第3章に「巨大な海兵隊基地がグアムに」と記されている。伊波の「グアム移転論」の主張の主要な部分がここにある。
そして許せないことに「(普天間基地は)世界で一番危険な基地」と言いつつ、しかしそれがグアムに移るのは何の問題もない、むしろいいことだと言っているのだ。
しかも、グアム移転は「沖縄以上に海兵隊の機能を強化する」としているのだ。そこには帝国主義の行う殺戮(さつりく)と戦争と軍事基地に対する何の怒りもない。沖縄(日本)以外だったらどんな基地でもOKだと言わんばかりである。
さらには「米新戦略に合致したグアム」として、(紛争の際に)「グアムからでも迅速に対処できる」とまで言っているのだ。米帝の世界戦略・アジア戦略にとってグアムは絶好の場所だ、だからグアム移転すべきだ、と言っているのである。
だが、米国領グアムは、植民地同然の島であり、沖縄と同じ状況にあるところなのだ(第2次大戦・太平洋戦争での大激戦地の一つだった)。グアムは米帝にとって、アジア・太平洋支配の、沖縄と並ぶもう一つの拠点なのである。
しかし問題は、伊波の著書には、そこに生きる労働者や住民の存在など、どこにも出てこないことだ。そこには18万人もの労働者人民が生活しているのだ。何よりも米軍基地建設に反対して闘っている労働者や民衆がいるのだ。
そもそも米軍再編によるグアム移転とは、グアムに司令部機能を移して、沖縄に前線的機能を持たせる、それによって沖縄をますます軍事要塞(ようさい)化するということなのだ。したがって伊波の言うようにけっして沖縄からの海兵隊の撤退を意味するものではない。さらに言えば、米帝は北朝鮮侵略戦争を遂行するために辺野古新基地建設を絶対的に必要としているのだ。
このように、伊波の「グアム移転論」はなんら米軍基地撤去の闘いに寄与するものではなく、むしろ労働者階級への武装解除をもたらすものでしかない。
また、今回の選挙戦のもうひとつの争点である経済・雇用政策でも、仲井真が「沖縄版グリーンニューディール」を掲げているのに対して、伊波も同様に「沖縄版ニューディール政策」と同じ政策を主張している。中身に多少の違いはあるものの、破綻した沖縄経済と資本主義の崩壊を救済する立場から、沖縄振興策に依拠した公共事業の展開を打ち出しているだけである。

 階級的労働運動をよみがえらせよう

さらに伊波は、県立病院の民営化などに「反対」としているが、支持母体である社民党、社会大衆党、共産党の3党は明らかに民営化推進勢力であり、実際、「革新首長」と言われている沖縄市や北中城村でも保育所の民営化攻撃が開始されている。その中で最大の実体である社民党と自治労県本部は最悪のお先棒を担いでいる。結局のところ財政再建を理由とする民営化の強行と労働者の首切りに行きつかざるをえないのだ。
このように労働者階級は今回の選挙戦で伊波を支持するとは断じてならないことを明確にさせなければならない。
あらためて断言する。沖縄基地問題の根本的解決と沖縄闘争の勝利の道は、仲井真が勝つのか、伊波が勝つのか、というところにあるのではない。大恐慌情勢のただ中で、全世界の労働者階級と連帯し、労働者階級の力で基地撤去・安保粉砕の闘いに勝利すること、帝国主義を打倒し、プロレタリア革命に向かって闘いぬくこと以外に勝利の道はないということだ。
もっと言えば、国鉄1047名闘争の勝利とそれを柱とする階級的労働運動の圧倒的前進こそが労働者階級の進むべき道であるということだ。それは4・9政治和解の反革命を打ち破って、国鉄全国運動を全力で闘いぬき、階級的労働運動を動労千葉とともによみがえらせることである。
今こそ労働者階級の力で、国際連帯の力で、帝国主義の戦争を阻止し軍事基地撤去を闘いとっていこう。米軍基地撤去=沖縄奪還、安保粉砕・日帝打倒へ、菅民主党・連合政権打倒に向かって闘い抜こう。