港区の慶応大学のそばで(少し)若い女性をゲットした。
まだ午前の9時台、こんな時間に珍しいお客さんだ。

 「乗りたいんだろうな」と思いながらスピードを緩めて近づいていくとようやく直近になって手を挙げた。「乗るんだったら早めにはっきり手を挙げろよな」とぶつくさ思いながら停車する。「こっちは交通戦争をやってるんだから、へんな遠慮は事故につながるんだよ。機械的に動けよ」。腹の中で思う。

 行き先は南麻布か元麻布らしい。そう遠くはない。
 
 軽い世間話をひとつしながら向かうと、麻布2の橋あたりで渋滞にぶつかった。
 先頭になって警察車両が邪魔をしていることが分かった。
 私、「この先に韓国の大使館があるんでその関連でしょうかね」
 お客「そうですね。よくデモっていうか街宣車が来るんでその警備でしょうかね」

 話が進んで行くと、彼女は「デモ」と言いかけては「街宣車」と言いなおす。「うーん?」

 何かのはずみで私が言う。「右翼といっても大半は、車で騒ぐだけだからこんなに警備をしなくってもいいんでしょうけど。あまり騒いだら捕まえればいいんだから。そのための法律も作ったんだから」
 
 彼女「えっ。街宣車でも届け出がいるんですか?」
 私「日本は警察で成り立っている面もあるから、警察の許可なしになかなか動けませんよね」。     
 「警察も困っているんじゃないでしょうかね。このままじゃ、公安警察は要らないっていうことになっちゃうから。だからどうでもいい街宣車に張り付いて警備の実績を上げなくっちゃいけない」
  「たまに、原発反対のデモなんかでは時々捕まってるらしいけど、若い人が騒いでくれないからあまり捕まえるわけにもいかないし」

 突然話題ががらりと変わった。
 彼女「なんか戦争の話が出てきて嫌ですね」
 私「そうですね。きな臭いですね」

 そんな話題になってきたころ、目的地に着いてしまった。
 彼女「もっとお話しが聞けたら良かったんですけど」
 「朝から大事な話を聞かせてもらって…」
 今日一日元気で過ごしたいなとお互いに顔を合わせながら次の仕事へ。