「本当のこと」を何一つ語っていない。
 うーん。書かれていることの大半は事実なんだろうけれど。
 「左派」とか「正論」とか「テロは許せない」とか、言葉だけが浮いている。
 「肝心なこと。へそになる事実」から逃げている、ということかな?
 
第一部の「314Ⅱ」について。
 2006年の関西の行動の実際の背景とは何か?
 もともと当日の関西支社での政治集会は、今の関西派につながる人々をたたき出す場として仕組まれていたという話だ。これが事実かウソか?まずしっかりと語ってほしい。「兵庫問題」とは何か?共闘や統一行動の中で協会派と親しくなったことが、清水さんや与田の怒りを買ったともきく。水谷・岸の両氏は、だからこそ「腐敗の問題ではない」「路線問題だ」と「正論」を声高に叫んでいたのではないか?
 事件がなければ、当日か直後には反対側の「テロ・リンチ」が予定されていたといってもいい。
清水氏のその後の自己批判をみても、清水さんを筆頭とした「会議における暴力性」は限度をはるかに超えるものだったことが分かる。
 参考までに(水谷さん主宰とチマタでいわれる)「現代革命論争資料蒐集」から。 政治局会議への提起(清水丈夫)1(2006年7月)
 
 筆者らのキーワードは「テロはいけない」「路線問題」「対峙」「元に戻せ」「正論」などか?
 戦闘同志会が荒本に拠ってクーデタと「対峙」していたと何度か強調している。
 では「対峙」や「元に戻せ」とはどういうことか?
 関西支社に突入して再占拠(奪還)する。反乱分子を残らず捕捉し叩きのめし、「元に戻す」。監禁-追放する。
 うまく行けば反乱分子はあきらめて無抵抗で開城するだろうけれど、でなければ、大阪・京都・兵庫などの拠点で篭城する。素手になるか鉄パイプまで発展するかは不明にしても、一個の「大戦争」も想像された。
 これが「テロはいけない」論?
 ことの正否はおいて、何か民青の「正常化」みたいな表現だ。
 
 「暴力に対する暴力の応酬」。素朴にはそんなことではないのか、否か?自らが黙々と屈していった日々を振り返って中核派の「組織的本性」は分かっていたという。自ら担ってきた「組織的本性」だ。02年、白井朗さんや角*さんへのテロを企画・実行したのはだれか?「左派」であることは今や自明だ。
 「正論」の中身があまりに乏しくて、肝心なこと、筆者らの立場が隠蔽されていること、これが最大の問題だ。
 そう、「政治的な卑劣さ」というべきか?
竹 関西のそういう力による「強訴」「対峙」、が中野さんたちを動かすバネになったことはたぶん間違いなさそうだ。
桜 直後の「しばらく様子を見よう」という中野さんの対応は、それ自体としてはそういう「戦争的」事態への、ま、順当な判断ともいえる。
梅 そうだ。仮に「東西の全面戦争」にでもなったら収拾がつかない。それどころではなく、政治力学的には「左派・武闘派」の奪権にも直結しかねない。世間的にも「内ゲバから内内ゲバの復活・回帰」と受け止められたろう。いわば岸武闘派政権の誕生か?つまりは「左派」によるカウンター・クーデタ??
桜 そうだ。著者らにはその辺を語って欲しかった。
 同じことだが自称「左派」と「二つの右派」論。
  中身の解説がなくてさっぱり分からない。
  「左派」が何と対峙し、何に拠ったのか?
 後の中央派の『50年史』によると問題は「血債主義」と「政治決戦主義」だという。
 後者は「万年決戦主義」批判を超えた「無条件の、反『政治闘争主義』」ともいえそうだけれど、その背後には「内戦による組織の極限的疲弊」がある。「ゲリラ・パルティザン」路線の行き詰まりをめぐる形を変えた抗争が、意味不明な論争やにはまり込んだとも思える。
 岸氏も自身が責任者となった杉並選挙ではこれを意識して「総力動員」による方式を改めたとしてはいる。とはいえ(清水さんに直接口説かれて)三里塚担当になった岸氏の自己批判には、現地責任者として自らこだわった三里塚基軸主義の継続もある。
 そんなことを踏まえてなお、「70年代-80年代の蜂起の陣形」と組織のあり方-その継続と変革の問題をめぐって、収拾のつかないような混乱・矛盾が山積していたことが分かる。
 
 ここでの無定義な「左派」とは(その方向が何であれ)「変える」ことへの抵抗、安住、既得権の護持--以外の何を意味するのだろうか?
 そもそも清水さんに提起されるまで、断末魔の「極限的疲弊」の認識が2人には無かったのか?ま、なかったらしい。
 少なくとも、70年代には青忠さんと組んで首都圏委員会で激論し、意見書を出して「謹慎処分?」を受けたという(初めて聞くが)岸氏には、その辺の見識はあって良さそうとも感じるのだけれど。
竹 ところで中央派によって「血債主義者」に名を連ね、二人の著者に加えて「著者」とされる岩本さんやその後反党フラクションを理由に除名された甘粕氏はここではどういう態度だったのか?
梅 岩本さんは「関西を支持」、甘粕氏は「保留」かな?当時は政治局員の山森氏は、「左派」だったけれど、降格で許された。荒川スパイ事件では「銀行ギャング」事件の現場で逮捕されている。
 粛清の穴埋めに?鈴木たつお氏ら60年世代が復活している。