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で、職場や同業の会話を再現してみました。少し長いけど。

近場専門の乗務員たちは?
寅  参ったな。明日からどうしよう?どうする?
  おれは都心で近場の客も障碍者割引もほとんど無いから関係ない!
  病院専門なんだよね。「お年寄り」や「障がい者」が多いね。当れば遠距離なんだけど、大半は1キロ程度の駅だね。
    トータルして売り上げは平均以下だけど、ラクで宝くじ狙いがいいんだ。
豹  どうやら都心が怖いか。それとも都心のサラリーマンが嫌いかだね。
  駅付けが多いけど、似たようなもんだね。
   「ピストン輸送」が専門だ。今回はきつい。
    やり方を変えようかとも思う。
  新橋や有楽町はどうかな。とくに新宿駅西口地下あたりはピストン専門らしい。
    ここがどうなるかは「見もの」だね。
  

カサ代わりの功罪
   1回400円や5百円だと、時間当たりの売り上げが3千円になるには、6回も7回も乗せないと勘定が合わない。
   10分に一回、ピストンするには、降りた場所で無理やりUターンしても間に合わない。ピストンは辞めたほうが無難だ。

路地裏の恐怖
  雨の日の月島とか、雨狙いのポイントもいくつかある。
     「カサより安い」というのも増えそうだ。
  雨や雪などの日には近場の体の悪い人が「悪いけど、今日は、路地の中に入って」ということも増えるね。下町は特に年寄りや路地が多い。

   そう。会社でも「路地には入るな」という注意はあるけどね。
    狭い路地に人がいる。飛び出しもある。行き止まりでバックしようとすれば、路上に何があるか分からない。時間を食ってあせれば、よほど気をつけてもこすったりする。始末書が待っている。何といわれようと、路地は避けたい。
豹  オレなら始末書なんてものの10分で書けるけど。あんたじゃ小一時間は軽くかかりそうだ。脂汗をかきながら、ね。

  最悪、路地の入り口でとめて、手を引くか荷物を持ってあげるのも選択肢ではある。
  でもそれで、「駐禁」でつかまったら?
  そうなんだよね。実例もずいぶんあるし…。

駅や病院? 君子危うきに…
猫  天候の悪い日は、駅や病院に近づかないか、勝手に「回送」にするかが無難かもしれない。

  多分、駅の構内では、車がいなくて人があふれることになる。
  そう。乗り込んできて、焦りと苛立ちをぶつける。せっかく「好意」で入っても…。やりきれないね。

猫  若いサラリーマンや中距離客は外に飛び出してくる。残るのは走れない人たちか、乗りなれていない人だけだ。これがまた怖い。

  外で信号待ちすれば、勝手にドアを開けて乗り込んでくる。
      危ないし、中央車線を走って、遠くから、良さそうな客を選別するのが一番だ。
  それって違反だけど。でもそれがいいかもね。

  「わが身大切に」「君子危うきに」ね。

(話を広げて つづき)
  業界全体でみれば、営収の増減は分からない。
    ただ、今までの話でも「実車率」は上がるはず。そんな雨の日に路地裏でニッチモサッチモ行かなくなる車を脇にみて、お得で安全な走りをひねり出すのがいいのかも。

「はいポーズ」
今度の料金改定は陸運局にとっても、「何かしています」のポーズ取りのように思えてならない。「障害者やお年寄りのため」みたいな、ね。
  業界にとっても、相変わらず「なべ底景気」だ。協会幹部も変わった博打をしたいだけじゃないかな?どの道、乗務員にかぶせるだけだ。
  単なる「おためごかし」。

おためごかしと丸投げと
牛 「お年寄り」や 「弱者のため」みたいな話があるけど眉唾だね。
  小泉改革のときに「増車のメリット」として「失業者が減る」みたいな事を言っていた。現役の乗務員が安月給の一部を新規参入の新人に分け与える、っていうことだった。
    あれが「ブラック産業」に拍車をかけたんだよね。
  前回の値上げの時はマスコミも信じられないほど好意的だった。「乗務員の過酷さ」みたいな特集が続いた。
  あれって、業界の鼻薬が効いたのか?値上げしてパッタリ消えたね。良く言って実情をよく調べもしない「善意の気分屋」。
牛 でも、イットキ、一部だけでもそんな「優しさ」みたいなものがあり難かったのは事実だよね。

  ま、労組も「減車、減車」といい続けて。地理試験が難しくされて、人手不足になってからもまだ「減車を」とトンチンカンなことをいう。これまた業界の代弁者に成り下がった。
  それは、組合も活力を失ったからで、お年寄りの幹部らの「変節」というのは少し酷な気も。「トンチンカン」だけでいい。それにもともとこの業界では「労使共闘」が必要な場面も多い。

車   なるほど。「組合が業界をリードする」こと自体は必要だったんだね。

障割りの乗務員負担
  障割りの時と同じ。値下げの条件に「自主的に」障がい者割引を導入した。
  で、結局は割引分は乗務員に丸投げだ。世間は知らないけれどね。

鼠  そう、「運転者負担」。クレジットの手数料もそうだし。ま、パスモなどの「交通系」は手数料は取られないらしいけど。
   「処理が速くて損の無いスイカ」を使って欲しいね。
   特に路上の降車ではね。

  クレジットなどの手数料は「乗務員負担」がほとんどかな。
    障割りはだいたい6割が乗務員負担。千円の割引で6百円を持つのが相場か。
  正確には会社により、乗務員により、だ。
  会社によっては全額会社負担もある。ごく一部だけれどね。これだと気分的に負担が楽だ。ただそんな会社でも、そういう制度を知らないほうが多数派だ。
  オレの歩合は70%。だから70%を運転者負担だ。必要な事だから、気にしないけどね。
  オレは嘱託だから50%。制度がある以上、たんたんと、事務的に処理するのが当然だ。
   「障がい者」かそうでないかは外見ではわからない。障がい者手帳の有無で自分の「判断」を排除して、実務に徹する事だ。
  オレは営収が少ないので45%。オレよりはるかにいい生活をしている障害者に割引を求められると息苦しくなるときがある。

  どこからも「公費負担」の声が聞こえない。誰に言えば良いのかね。お国の役所か障害者団体か?俺たちの労組か?    

お年寄りって誰の事?
鼠  「お年寄り」って誰の事?
    オレは後期高齢者だけど、20年間、無事故無違反でやれている。ウチにこもるよりよっぽどいい。
  うちの会社でも乗務員の半分は「お年寄り」だ。若い客の大きな荷物をトランクに積まされて、「ぎっくり腰」で休職という話もよくある。「バカだね」で終わり。
   「高齢者ドライバーの事故」が言われるけど、「高齢者の乗務員」がいなくなったら、会社も業界も成り立たなくなってる。
   俺たち「お年寄り様」だね。
… … … … … … … … … … … … … … … … 
  どうしたことやら。
  どうなることやら。
  どうしたもんじゃろねー。


公式資料と計算式からおおむねの改定料金を出しました。
繰り返しますが、「料金」とは「距離メーター」と「時間メーター」の合計です。
同じ近場のコースでも、曜日や時間帯、そして天候やタイミングによって200円や300円の差は軽くつきます。それが「時間メーター」というものです。

東京駅から都内各地   
東京駅から山手線沿線の距離と距離料金(改定)  
 上野駅池袋駅新宿駅渋谷駅品川駅
距離(キロ)410878
改定料金14503450281024902810
      
【注】ここでは省くが、銀座~池袋のサンシャインや、港区の芝浦~上野なら首都高のほうが激安。
 もちろん高速料金込み。上も下もコースが同じだからだ。
      
     高速もほぼ同じコースの時は、以下の計算式が有効と思う。 
 地上料金=距離*400円から600円  
 高速は=300円+3キロ超のキロ*100円 
   ∴地上の加算はキロ100円から300円。高速料金はキロ100円。少し流れが悪ければ、渋滞でなくとも高速が安い。
      ただ、場所によっては高速も渋滞して遅い。 
      
東京駅から環八周辺(15㌔~20キロ)の距離と距離料金(改定)
 蒲田駅二子玉川駅小岩駅東武練馬高島平駅
距離(キロ)1516141620
改定料金51305530481055306810
      
ついでに「ロング」の距離と料金  
銀座からの距離と距離料金(改定)   
 千葉駅取手駅大宮駅桶川駅前橋・高崎
距離(キロ)40403245110
改定料金1361013610108901529037210
      
 横浜駅相模原三浦・小田原立川駅八王子
距離(キロ)3047803743
改定料金1025015930271301257014570


 なぜ「時間メータなどがあるのか?」
もし無ければ、都心のタクシーは激減するかもしれません。
下町でも、流れの悪い有名な幹線道路にはタクシーは走らないでしょう。

私たちも生活がかかっている。

お客さんにも色々います。
夕方から夜の盛り場では(かつては)大変な渋滞で、歩くよりも遅い場所が少なくありませんでした。そんな中に「お客さん、かんべんしてよ」のお願いを無視して「行け」という。渋滞の真ん中ごろでしびれを切らして「ここで降りる」。
前後して「30分ただ運転」に泣いた乗務員も少なくない。

今でさえ「ウィンドーショッピング」が大流行ですが、かつては「ひやかし」tぽい言葉がありました。
でも、お店を構えて者を売る人と、同時に1人か1グループしか相手にできないタクシーとは大違い。ご理解のほどを。

もちろんそんな場所が好きな乗務員もいるが、多くの人は「近寄らない」「あそこに行きそうなエリアでは【回送】にして逃げる」のでした。
「メーター料金」が広がっても、大きくは変わらないともいえますが。

前橋市の市街地も、信号待ちだらけです。
ここでも、乗務員は「距離メーター」で支えられているのでしょう。
     (つづく)

17年1月末から都内のタクシー料金のほとんどが改定されます。
「初乗りの引き下げ等」とも言われますが、役人のいう「等」とは「実は他の多くのこと」をも意味するのでご注意を。
  資料を補充して改定しました。
一般には「6キロを境に上げ下げがある」といわれますが果たして真相は?
以下、主観とデータを駆使してみました。

基礎データ    現行   改定
区分            初乗り  加算    初乗り  加算l
距離制        730円   90円  410円  80円
  単位の距離    2㌔   280m 1.052m   237m
時間制            -      90円    -       80円
  【注】借りきりや迎車などは略

距離あたりの料金の目安(公式・非公式の通達などから)
キロ      1    2     4     6     9     15    30     50    100    200
現行   730 730 1450 2080 2980 4960  9730 16210 32230 64450
改定   410 730 1450 2090 3130 5130 10250 16970 33850 67610

基礎データを基にした「加算」の指標(単位は円)
                              現行  改定   【注】
距離(キロ当たり)     321円  337円
時間(1分あたり)        51円   53円  (但し時速10キロ以下の時)
初乗りの「下駄」         87円    55円  (ドア開け代)

【注1】最後の指標は独自に算出したもの

     
【注2】「おおむね6キロを超えると値上げ」になる。「実際には凸凹があるので6.5キロ超は値上げ」と説明される
        
【注3】本来料金は、「距離あたり」と「時間距離併用」の合計である。この「距離当り」の表で料金のおよその目安かというとまったくそうではないことにご注意。

    都心では、信号待ち1回か2回で時間メーターが一つ上がるのがいわば「常識」。単位時間(秒)が下がることで、渋滞時の料金が上がるとも思える。

    ちなみに銀座あたりでは現行(旧制度)ではキロ=800円、青山通りの西行き青山3丁目まではキロ400円程度だ。

    東京駅~成田空港がおよそ70キロ。110キロはおよそ東京~前橋または高崎。高速道路では時間メーターは動かない

では楽しいタクシーライフをどうぞ。


会社も行政や警察のもろもろの運用に右往左往している。
ガラス張りの行政とか見通しの聞く警察なんてないから、要はコネと接待だ。
先日は同僚の知り合いのつてで、お役人を接待して、実態を探ろうとしていた。
けれども場末の安い店で漏らしてもらえる情報はゴミだ。
大手や何かは色んなツテもあるだろうけれど中小でしみったれt会社では、業界の常識的情報すら知らずにいるのも少なくない。見当違いもはなはだしい。
 
 警察関連の情報はどうしたら手に入れられるか?
警察職場の飲み会の場所代を貢ぐのなら、交通安全協会や防犯協会に会社ごと丸ごと入れれば済む。私も時々そんな話をする。天下りにも良い。
 
で、名案を振り絞ってみた。
 「自家用車で通勤する車を会社の周りに違法駐車させる日を作ればいい。ご近所を名乗って最寄り・管轄の警察に電話すれば良い」。
 「違反のステッカーを張られたら督促状がくるまで音なしの構え。出頭してはいけない」
「罰金は会社が補てんすれば良い。出頭したら累積点が付くからだめ」
「で、合法的に警察への袖の下ができる」
 
さあ、どうする?

①信号の変わり目が変化している。
 右折や左折の矢印がでるタイミングが、予告なしにどんどん変わる。
 もともといくつかの交差点では、青と右左折の順番やタイミングが特異な場所があった。
 それがこの1年、急に増えた。
 
 前方が青になるタイミングに、右折だけでて青にならない。歩行者用の信号だけ青になり、長く変わらない。それやこれやでずいぶんと変わった。
 
 それ自体は、それぞれの交通事情を反映するという「実験」としては理解はできる。
 けれど、予告期間や「注意期間」なしに唐突に変えるのは参る。
 体が動いてしまう、後続車が気がつかずにクラクションを鳴らす。お客が騒ぎ出す。
 
 長く続いた習慣を変えるには、予告期間に続いて、警察官が張り付いて「違反車」を止めて警告する期間が必要なのだと思う。チャンスとばかりに違反で稼ぎまくろうなどとは…。

国土交通省の陸運局からの通達があったそうな。
営業用自動車の「駐車違反」での会社への処分が厳しくなったようだ。(?)
 
同じ車で駐車違反が重なると処分、会社当たりの駐車違反が重なると処分。
どちらも台数*日数で「停止」され、車庫で遊ぶことになるが、処分の有無やいつどこでや量は実際にはやってみないと分からないことになっている。
 
先日、当社にも2年前から1年前の違反の警告と事情聴取の連絡がきたそうだ。
あまりにも遅いけれどこれが常態だ。「処分は忘れたころにやってくる」
 
良くある例では、改めて乗務員が会社の上司に呼び出され、訓戒と事情聴取と改善努力の始末書や報告書を求められる。朝これからという時に、いやな目にあい、場合によれば徹夜明けで疲れきって帰ったところで呼び出される。「もうとっくに怒れられた事をまた蒸し返すのかよ」と言いたくなる。
 
乗務員にとって、「文字を書くこと」と「座業」は苦手中の苦手。ま、私なら5分か10分で書ける決まり文句も30分や1時間かかる。事務屋さんなら始末書を書く手間自体は何てこたぁないだろうけれど、乗務員にとっては苦行だ。
 
こんないじめのようなやり方でつじつまを合わせる行政や会社に、「絶望」の言葉が沸いてくる。
 
今のところ、どこの会社でも車は遊んでいるから、前もって処分が分かれば実害は無い時もある。とはいえ、誰もが出たがる金曜や「たまたまみんな出る」日に当たれば、出番変更や事実上の「出勤停止」になりかねない。そこいらの会社にとっては、行政の指導を受けること自体が大変なことだ。妙に過敏に反応したり、暇つぶしの大騒ぎにもなりかねない。人をいたぶる不快と快感は同居するものだ。
朝礼で「○○のせいでみんなが迷惑」などと言われれば、会社に出るのも嫌になる。
 
せめて、実務的・事務的な処理・処分を望みたい。
 
 

かつては駅や会社などには必ずと言っていいほど、仕切る人間がいた。
今では、数少なくなった。
 
A.上野駅の仕切り屋
 京成上野には、改札の外(不忍池側)にタクシー乗り場がある。
 成田空港から直行したお客が、大きなトランクを引きずってくるには、階段を使わずに済む利点がある。
 
 昔の話だけれど、私も「おいしいところ」と聞いて、わざわざ付けてみた。
 
 外の待機場所に並ぶと、胡散臭そうな連中が顔を出してくる。
 「初めてなんだけど」と挨拶すると、仏頂面だ。
 「ここは良い客なんかいねえよ!」
 それでも素知らぬ顔で並び続けると、あきらめて車に戻る。
 
 順番が来て、構内の待ち場に着くと今度は身長180くらいの太った男がやってきた。
 「トランクを開けてみろ!」。しぶしぶ開けて見せる。
 「余計な荷物があるじゃねえか。これじゃ荷物を載せられねえぞ。出直して来い!」
 
 一見筋が通ったような、でもそのボス面に、「おー分かった。次からはそうしよう!」と投げ返す。
 一瞬にらみ合ったけれど、幸いすぐに客が来た。
 とはいえ、しばらくは、ほとぼりが冷めるまで、行くのを見合わせた。
 
 上野に詳しい同僚に聞くと、「あそこは○○が仕切ってるからな」という。
 「下手をしたら5,6人、すぐに集まってきてフクロだよ。ま、良かったね」
 
 他の同僚も、同じ京成上野の道路側の常連だ。
 数台から降りてきた運転手がたむろして顔を突き合わせているのも、何度も見た。
 ガタイの大きい連中ばかりで、見るからにやくざっぽい。
 「あれじゃ、客が逃げちゃうよな」と言ってみると、「多分ね」と笑う。
 彼は、やくざっぽいのが好きなのだという。生い立ちを聞いて納得もした。
 
 「日本語もしゃべれねえ中国が乗ってきてよ」という会話を紹介する。
 「あんまりわかんねんで、遠回りしてやった」とかいう会話だ。
 話半分なのか、本音なのかもよく分からない。
 とはいえ、昔堅気の運ちゃんの、仕切り屋がいることは確かなようだ。
 
 最近また、続きの話を聞いた。
 バブルのころ、実においしいポイントだったのは確かだ。
 2,3万の客はざらにいた上に、「ご指名客」を何人も抱えて分け合っていたらしい。
 月の売り上げも軽く百万を超え、チップも合わせれば、百万を超える月収だった。
 
 「交通違反や事故の時でも、調べに来た警官が名前を聞くと最敬礼するんだよね」ともいう。
 何か起これば、手下や仲間が何人も飛んでくる。時には警官を数十人で囲んで脅す。
 「怖いもの知らずだったよね」。
 警官もビビって、「なしにする」こともあったらしい。
 相手が一般人なら、土下座して謝って、財布を渡して逃げ出す一般人もあったとか…。
 
 5年程前に60才の定年を迎えて、随分まともな年金暮らしに入ったとたん、あっけなく病死してしまった。
 
 「これからっていう時にね」「やっぱり体が強すぎて、無理をしすぎた結果カネ」
 
 映画「青春の門」を思い出す。
 労働運動も、こんな奴らを敵にして、時には配下に組み入れて、抗争し、闘ってきた歴史がある。
 在りし日の、下層社会の原形というべきこの像をもう一度基底に据えて、今の世を見直したい。
 
 「資本主義とは何か?」
 「途上国の運動の知られざる特性とは何か?」
 
 のっぺりした「今の社会」。そしてあまりにひだの無い「社会観」。
 さらに言えば、「法や規範や下手な理屈」に過度に依存した活動家の運動観…。《以上》
 
 
 

 
メガネ屋さんで見つけてうれしかったので…。
 
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第263回

まっすぐ言っても伝わらないこと。の巻

ちょっと手抜きですが
彼女のブログからそのまま無断拝借。
雨宮さん、ごめん。
 
 
 
 大阪の橋下市長による「慰安婦」発言が物議を醸している。
 何かもう、どこから突っ込んでいいのかわからない状態だが、この問題については、5月24日発売の「週刊金曜日」の連載「らんきりゅう」で書いたので読んでほしい。
 原稿のタイトルは、「『性』を扱う難しさ」。
 この原稿を書いて、私の中でいろいろと思うところがあった。書いたのは要約すると以下のようなことだ。
 一連の橋下発言を受けての批判の中には、深く頷くものもあれば、「それはまったくその通りなんですが・・・」という「どうも説得力に欠ける正論」もある。当然、「女性の人権」は大切だし、誰一人として尊厳を踏みにじられていい人などいない。が、たとえば橋下氏が「風俗業の活用」などと言う時に、私はどうしても「今現在、風俗業で働いている人」の立場に立ってしまう。そこから見ると、橋下発言に対して「女性の人権」という「正論を用いた批判」はどのように映るのだろうか?
 前半は、そんな問題提起をした。
 いくら「人権」と言ったところで、今この瞬間も性産業で働く人は山のように存在する。そして彼女たちが橋下氏の言うように、「自由意志」でその仕事に従事しているわけでは決してないことを、多くの人が知っている。特に貧困問題の取材をしていると、「女性の貧困」と「性産業」のあまりにも深い関係に、時々気が遠くなってくる。
 原稿の後半では、自分自身がもの書きとなる十数年前、キャバクラで働いていた時のことを書いた。90年代後半の当時は、マスコミにやたらと「セクハラ」という言葉が登場し始めた頃だった。「働く女性の人権」がメディアで取り上げられるたびに、キャバ嬢である自分は、その「人権が守られる女性」に含まれていないんだな、とぼんやり思った。水商売ではない女性が会社で身体を触られたりしたら「セクハラです!」という言葉は効果を発揮するものの、キャバ嬢がそんなことを言ったところで誰がマトモに取り合ってくれるだろう。だからこそ、当時の私は「女性の権利」とか言う「正論をふりかざす大人」たちに、男女問わず深い反発を覚えていた。そんなのは「建前の綺麗ごと」でしかなくて、そんな「建前」が幅をきかせればきかせるほど、結局自分たちに皺寄せがくるような気がしたからだ。「表の世界」で生きる人たちの権利が守られると、自分の権利が侵害される。そんな認識の中に、私はいた。そしてそれは一面では、真実だった。
 原稿を書いたあとにもいろいろ考えて、気づいた。これって、いろんな問題に繋がっていることではないだろうか。なぜかというと、当時の私が今の橋下発言とそれに対する批判を耳にしたら、もしかしたら橋下氏を支持していたかもしれないと思うからだ。当時の私は「綺麗ごとを言う大人」よりも「酷い現実を認識した上でぶっちゃける橋下氏」の方に、何か信頼に似た感覚を覚えていたかもしれない。
 そんな当時の自分を振り返ると、まったくもって「自分の権利が守られていない」状態だった。自分の権利が守られていない状態にいる時、人は、他人の権利に思いを馳せるような余裕などない。
 さて、橋下発言がメディアを賑わせていた5月17日、「生活保護法改正案」が閣議決定された。改正案は「水際作戦」を合法化し、親族による「扶養義務」を強化させるような内容で、最後のセーフティネットにひっかかるためにはこれまで以上にいくつものハードルを超えなければならないようなひどいものとなっている。が、今国会に提出される予定だ。
 「生活保護の切り崩し」については私も再三訴え、活動を続けてきた。しかし、なかなか大きな声にはならない歯痒さに苛まれてもきた。そんな時に橋下発言を巡る原稿を書き、キャバ嬢だった頃の気持ちを思い出して、なんとなく、理由がわかった気がした。
 「女性の人権」にしても「貧困」にしても「労働問題」にしても、厳しい立場にいればいるほど、「自分の権利が守られる」状況に対して、まったくリアリティが持てない。そして私自身、「人間らしい働き方」「安定した雇用」なんていう大文字のスローガンを訴えれば訴えるほど、当事者の人たちがシラけていくような空気をずっと感じてもきた。そんな人たちからすると、私は「守られた立場にいながら綺麗ごとを言う呑気な偽善者」にしか見えないのかもしれない。実際はただのフリーの物書き、どこにも「守られて」などいないのだが、しかし、今の私はキャバ嬢だったあの頃と違い、「他人の権利に思いを馳せる」だけの余裕がある。そしてその余裕を持つことは、今のこの国ではどれほど難しいことかも知っている。
 「権利」はもちろん大切だ。その大切さを訴えることも、非常に重要なことである。しかし、権利と声高に言えば言うほど、今もっとも「権利」がおかされているかもしれない当事者を遠ざけてしまうような転倒は、確かにある。
 結局、どんなに「人権」などと言ったところで、今実際に多くの人が性産業に望まない形で従事し、安定した働き方をしたいと思いながらも3割以上の人が不安定雇用の立場に置かれ、生活保護が必要な人の多くはそんなセーフティネットに守られることもなくギリギリの状態でなんとか働いて綱渡りの生活を続け、福島第一原発では今も多くの人が被曝しながら収束作業にあたっている。
 私たちは、一定数の人の権利が踏みにじられることを前提とした社会で暮らし、そして「どんなに頑張っても報われない」人が一定数必ず生み出される国で生きている。そして踏みにじられ、報われない人が増えれば増えるほど、何か・誰かを「既得権益」と叩く「祭り」は必要とされる。
 この悪循環をどうすればいいのか。結局、「誰もがそれなりに頑張ればそれなりに報われる社会」が実現しないことには断ち切れないのだろうか。
 って、そんな「解決策」自体が、また「呑気な偽善者」の戯言なのかもしれない。
 そろそろ、本当に、一番届かなければならないところに「届く」言葉が必要とされているのだと、切に感じている。

賃金は半分以下

タクシーと男子常用労働者

 【解説】厚労省の賃金統計が公表されています。
 2012年分の「賃金センサス」による都道府県ごとのタクシー運転者の年収は、300万円台が8府県、200万円台が35道府県、200万円未満が3県で、最低は高知の166万円でした。
 平均年齢の最高は高知の64・9歳。以下、15県(前年は4県)で60歳を超えています。
 「毎月勤労統計要覧」と「賃金センサス」をもとにまとめたタクシー労働者と男子常用労働者の年収格差(11年)は、前年より1万円縮まって237万円になりました。
 時間当たり賃金では男子常用の2459円に対しタクシーは1060円で半分以下の43%という結果になりました。
 (注)数値は、厚労省調査をもとに自交総連が集計しているもので、業界紙等の比較と異なります。また「毎月勤労統計要覧」の発行が3月末ごろのため、男子常用労働者との比較は1年遅れになります。

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